背景

ところで、かれこれ20年近い付き合いになる私のほぼ唯一といって良い友人が今度の10月3日に父親になるらしい。「父さんだから10月3日」という脱力系ダジャレを記念日に持ってくるあたりさすがである。普通に読むとイラっと来るようなダジャレを「オヤジギャグ」という愛嬌に昇華できる(してもらえる)年齢になって男は一人前なのであろう。とりあえず7〜8年前くらいから白髪が目立ち始めていたはずなのにいつの間にか無くなっていた事は秘密にしておいてあげようと思う。


最近異常な勢いで読書欲が私を支配しているのだが、そんな事とは関係なく最近私の心を打ったのは東スポで連載している元:プロ野球近鉄バッファローズ太田幸司氏の自伝の中のエピソード。
甲子園のアイドルといわれ、全くプロとして活躍していないのに太田氏がオールスターファン投票で選出されてしまい、肩身の狭い思いでベンチの隅に座っていたら「おい、そんな隅っこに座るなよ。」と笑顔でベンチの中央に招き入れてくれたのが張本勲氏と故:大杉勝男氏なのだそうだ。
お二人とも荒くれイメージの強い昭和のパリーグ、の中でもとりわけ荒くれムード漂う東映フライヤーズ、の中でも喧嘩最強ランキングでは常にトップ争いを繰り広げる豪快なイメージ漂うお二人だ。


だが。故:大杉さんといえば選手・コーチ時代を通じてどんな相手でも、例え新人記者のインタビューでも常に敬語で応答する紳士として尊敬されていたお方。
とりあえずwikipedia大杉勝男の項を観るだけでもhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E6%9D%89%E5%8B%9D%E7%94%B7心が洗われること確実なのだ。
そして、ハリさんといえばあまり知られてはいないが被爆、在日、障害(幼い頃に右手に火傷を負い指がくっついてしまった)の三重苦を背負っている方なのだ。


単なるイメージ通りの荒くれ者なら、人気だけでオールスターに選ばれたアイドルなんか相手にもしない、どころかむしろいじめ抜いていたであろう。大杉さんの実直さ、張本さんの不遇にめげぬ芯の強さがあればこそ「将来ある若者を好奇の目で観てはならぬ」と義侠心が疼いたに違いない(この辺りは現在でも、サンデーモーニング内で張本さんが、世間的には生意気と捉えられている若者に対して常に温かい視線を向けている所から窺う事が出来る)。やはり男とはこうありたいものであり、またこういう男こそ真に讃えられなければならないのだと思う。


と、同時に、例えば物語でも登場人物にストーリーでは語られていない設定を細かく作る事によって人物像に深みを与える事があるように(例:ジョジョの奇妙な冒険吉良吉影)、人はそれぞれ人生において「背景」となるモノを無数に抱えている物であり、敬意を持って接する事で必ず心を打つ何かを吸収しうるという事だ。敬意を持つ必要ない人もいるけどね。福田とか大矢とか北の(以下略)。