まだ梅雨真っ只中なので全然夏っぽくはないんですけど、まあ7月ですね。
と言う訳で、って事もないんだけどアニメ「AIR」のDVDをじっくり見直しました。
いやぁ何度観ても良い作品だなあ。
あんまり謎解明とか解釈論的な目で観ちゃうと粗探しになってきちゃうので面白くないと思うんで、とりあえずポイント。
・ハッピーエンド。
観鈴が死んじゃうんだから悲しい結末ではあるんだけどハッピーエンド、って言うのは僕も納得ですね。
観鈴は、神奈がかけられた永遠に悪夢を見続ける呪いを引き継いだ存在なんですよね。1000年間、その呪いを受け継いできた人達は「幸せな思い出に包まれて死ぬ」という事ができなかった。
往人は、自分の存在が消えてしまうことを知りながらも「観鈴のそばに居続ける」という選択をしてくれた。晴子も自分と一緒に暮らすといってくれた。
観鈴は「自分に一生を捧げてくれる人がいる幸せ」と「そうは言っても結局そんなもの助けにはならずに理不尽な呪いで死んでしまう事実」のどちらを選ぶかの選択を迫られて「誰も恨まずに100%幸せな気持ちでいっぱいに死ぬ」事を選んだわけですよね。
「生と死は等価値」という意味で幸せに死ぬ=幸せに生きるという風にとっても良いし、作品中でよく出てくる「観鈴ちん強い子」っていうのは「理不尽な目にあってもうらまずに幸せを感じて生きることが強さ」という風にも取れますよね。
「強く生きると言う事は、自分も周りも幸せに生きると言う事だよ」って教えてくれるアニメって!
冗談じゃなく道徳の教科書にすれば良いんじゃないですかね。
あと、神奈の呪いは政権争いというか戦争がらみといって良い物なので、観鈴が呪いを解除したのなら「人類の憎しみの歴史を解放した殉教者」とも取れますよね。観鈴の最初の登場シーン、気持ちよく海風を受けているシーンですけど、空を飛んでるようにも見えるし、足とか手の感じが磔にされたキリストにも見えなくないと思います。ていうか絶対意識して演出してると思う。
・恐竜
何気なく作品中に出てくる恐竜ですけど、テーマが「この星の記憶を受け継ぐ種族の最後の生き残り(神奈)の心を受け継ぐ」のなら、かつてこの星を支配していて、滅んだ恐竜は象徴として使われているのかな、と思いますね。アニメのラストは神奈が恐竜と一緒に飛んでいるシーンも出てくるから、そんな昔から翼人はいたって事なのかなあ。
観鈴の幼さ
いろんなAIR解釈サイト的なものを観て疑問に思ったのは「観鈴が高校生にしては幼稚すぎるのがイタい。オタ向けすぎてキモい」みたいなこと言う人が結構いたことなんですよね。原作では「呪いのせいで成長することができない」みたいなことをはっきり言っていた気が・・・。でもあれは確かバッドエンドシナリオのヘビーな日々の中で出てきた台詞な気がするから、すんなりクリアしちゃった人は知らない可能性もあるか。
どちらにせよ、アニメ版も「観鈴は呪いで成長を禁じられた存在」と言う事ははっきり示した方が良かった気もしますね。その方が観鈴の年齢にそぐわない幼稚さにも感情移入できるし、晴子さんが観鈴の髪を切るシーンも「一緒に暮らしていくことを決意した晴子が自らの手で幼い姿に戻してしまう=自ら観鈴を最期に近づけてしまう」という風に見せればまたあのシーンも泣けるんですよねえ。実際観鈴って家事は一通りこなすし、さいかとのシーンではお姉ちゃんっぽさを見せるし、知能に欠陥があるわけじゃなく単純に幼いんですよね。勉強はできなくのに、恐竜に関しては異常に詳しいんですよね。幼児ってそんなもんだし。トランプの絵柄の恐竜についておしゃべりするシーンはアニメオリジナルですけど、そういう表現も含んでいるんじゃないですかね。
ついでに言うと、同じくAIR解釈サイト的なもので「晴子さんは裏葉の転生」って言う人がこれまた結構いたんですけど、それはないでしょ。往人の母ちゃんが裏葉の転生ならまだ話は分かるけど。
オーディオコメンタリーによると、石原立也監督が往人の母ちゃんの服装を着物&ブーツに決めたらしいですから。これ多分平安時代プラス足元は死の行軍的なニュアンスで、こっちが裏葉だと思いますけどね。
まあ、1回では語りきれないですね。雲の形1発で時間経過を表現したり、目のハイライト一つで観鈴が正気かどうかを表現したり、とにかく感性の鋭さを求められる作品ですねえ。