水島努監督

と言う訳で僕の大好きな水島監督ですけどね。
結論から言って、現役日本最強のコメディーメーカーだと思いますね。


意外と水島監督の事って語りにくい気がするんですよね。


・「いつも股間をいじっている」「既婚者なのに40歳で童貞」等偽悪的キャラ設定を自分でしている。
・テレビ・ラジオ出演時はあらゆる意味で放送コードに引っかかる発言だらけでほとんど消されまくっている。
・「クレヨンしんちゃん」と「ドラえもん」との合同スペシャルの際、しんのすけに「尻に竹とんぼを挟んで『ケツコプター』」というギャグをやらせ藤子プロを激怒させた。


みたいなエピソードは数あるんですけど、個人的には「そんな程度で過激とかの表現で片付けるほど簡単にはしたくない」って言う感じなんですよねえ。
もちろんそこに
・大人でも感動する傑作と評価の高い「劇場版クレヨンしんちゃん」はこの人の手による作品。
なんて物を入れても足りない気がするんですよねえ。
まあ、ひねりのない言い方だけど、
喜劇を作る上での引き出しがとても豊富でしかも精度が高い
っていうのが一番しっくり来る表現じゃないかなあ。多分モンティ・パイソンとかスティーブ・マーティンとかレスリー・ニールセンとかが好きな、しっかり作ったクラシックなコメディが好きな人なら水島監督の作る世界はびったりはまると思いますね。


最近のお笑いは・・・っていう言い方は嫌いなんですけど、とにかく「客に予想をさせないようなトリッキーなボケをいう」→「脊髄反射でスピード・タイミング・切れとも完璧なツッコミを入れる」っていう、スポーツみたいになってきてるじゃないですか。まあほとんど今のお笑い番組観ないですけど。ボケが「自由演技」ツッコミが「規定演技」みたいな。
「お〜っと、ここでタカアンドトシの『トリプルアクセル欧米か』が決まった〜」
みたいな競技になってますよね。それを観ている客も、多分スポーツとしてみている気がするんですよね。下手すると、全突っ込み芸人のツッコミのスピードを、ストップウオッチで計って数値化してランキングにしてるヤツとかいそうじゃないですか。個人的には諸悪の根源のM-1にとっとと潰れて欲しいなと思うんですけどまあそれはともかく、
本来のエンターテインメントって
「こいつわかってるなあ」
と客に思わせることだと思うんですよね。期待に応える事が技術というか。それを忘れちゃうと「イチローって毎日ヒット打ってるから観る価値無いよね」みたいな勘違いになっていっちゃうと思うんですよ。


水島監督って、ひねくれたギャグとか過激な表現が売りみたいに思われている気がするんですけど、一番素直に客の期待通りの事をやってるだけだと思うんですよね。そしてそれが唯一無二の水島努の魅力だと僕は思うんですけど。
そういえば、ドクロちゃんの先行予告番組でおかゆまさき先生が「僕の原作には8割くらいしか沿ってない」みたいな事を言ったらすかさず水島監督が「いや残りの2割も原作に沿ってますよ。僕がちゃんと行間を読んでおかゆさんが言いたい事を広げてあげているんです」っていってたんですけど、
これって結構本音じゃないですかね。
工藤公康投手が著書の中で「センスとは調整する能力の事。目から入った情報を如何に身体の動きに変換できるか(調整できるか)の能力をセンスという」って書かれていたんですけど、僕はこの言葉に凄く共感するんですよ。
頭の中でほとんど理解できてはいるんだけど言葉でどう表現すれば良いか分からない…みたいな時に、パッと自分のフィーリングにピッタリな答えが出てきたら物凄く気持ちいいじゃないですか。
そういう意味で、「こいつわかってるなあ」っていうエンターテインメントはやっぱり気持ちよいんですよ。やっぱり天使が人を撲殺しまくる作品なら、脳みそ飛び散って欲しいし、上半身吹っ飛んで吹き出す血の勢いで下半身がロボットみたいに飛んでいって欲しいんですよね。その期待の延長線上で、我々素人の一歩先をいく物を見せてくれるのが良い作品だと思うんですよね。


まあそんな感じで、僕の駄文がどうかはともかく「最近心の底から楽しめる娯楽作品って無いよなあ」とお嘆きのあなたには、水島監督作品をお薦めしておきます。とりあえずとっつきやすい「劇場版クレヨンしんちゃん」あたりから入って、「撲殺天使ドクロちゃん」「大魔法峠」ですかね。その前に今唯一地上波テレビで観れる「大きく振りかぶって」もさりげなく水島監督作品ですけど。