小麦粉編(2-1)

mixiの日記の話の改訂版です。
昨日家の近くに大型トラックが止まっていてですね。横に「We brings your dream to the tomorrow's next future」って書いてありました。
・・・言葉の意味は分からないがとにかく凄い自信だ!!
ていうか「次の未来」ってなんだよ!量子論的5次元の話とかかな?


先日ぼんやりと職場で某アスクルのカタログをめくっていたら、何とメゾンカイザー(エリック・カイザーという有名なパン職人さんが使う小麦粉)が売っていました。これには驚いた。
値段もびっくりのキロ当たり368円!いやこれ普通の小麦粉の市価の約3倍ですよ。まあ小麦粉って何トン単位で生産せざるを得ない商品なので特注品が高くなるのはしょうがないですけどね。すげえなあ。僕も粉の開発やったことありますけど、相当数の店舗を持っていて毎月何十トンとか使い切るレベルの消費見込みが無いととてもじゃないけど無理。単品ブランドでちゃんと生産ラインに乗るところが凄い。商売上手だなあ。決して悪口じゃないですよ。
と言う訳で、パン作りが趣味で会社の経理担当している方である程度領収書を改ざんしてもばれないような方はこっそりアスクルメゾンカイザー取っちゃいましょう。いいのかそんな事言って。


さて。ちょうどmixiの某コミュで国産小麦の話が出ていたんですけど、折角なのでちょっと話を膨らませていこうかなと。


一般的には輸入小麦より国産小麦の方がグルテンの量が少ないので、国産小麦で作る時は想像よりも膨らまないので水分量を減らしてしっかり生地を作った方がよいとされています。
現象と現場での対応の仕方に間違いは無いので正しい答えではあるんですけど、さらに深く掘り下げるとちょっと違う部分があります。

まずですね。日本の輸入小麦はほとんどがカナダ・アメリカの粉なんですよ。これらの国の小麦粉はグルテンが結構強いんです。通常日本では誰もがこういう粉を使って製パンを憶えるので、その感覚で国産小麦を使うと「グルテンが弱くて膨らまない」と言う感想が出て当然だと思います。

フランスとかドイツの小麦は日本とほとんど同じ様なグルテンの量・質らしいです。だからこれらの国のパンでふんわりした物はほとんど無いですよね。ちなみに私はフランスでずっと修行していたシェフと一緒に仕事していましたけど、フランスの粉でずっとパンを作っていると日本の小麦粉でもそれ程抵抗なく作れるみたいです。まあ僕はフランス行った事無いのでしりませんけどね。
ちなみにイギリスの小麦は質が良くないらしく、灰分量が多い、無理に褒めると「健康に良さそうなパン」になっちゃうらしいですね。イギリスでは小麦粉はほとんどビスケットに使うらしいです。ビスケットって全粒粉とか平気で使いますからね。分かりやすいなあ。


と言う訳で、「まず、輸入小麦は全てグルテンが強いわけではない」と言う事と、「水分量を減らしたからと言ってグルテンが強化されるわけではないので、国産小麦でグルテンを強化したパンを作るには?」と言う点から見て完全な正答とはいえないなあ、と言う感じなんですよね。「国産小麦でパンを作ったら失敗しました。アドバイスをお願いします」と言う質問に対しての説明方法としては満点と言っていいですけど。
と、言うわけでですね。国産小麦を使ってパンを作るなら一つの方法は
・バゲッドをメインに作る。
と言うのが一つの回答だと思うんですよね。ちなみに「国産小麦の方が風味がよい」と言う人が多いんですけど、否定はしないですけど正確には「グルテンが出来にくい→デンプンに火が通りやすくなるのでそれだけ麦芽糖に変わるデンプン量が増える」と言う事になるので、国産小麦は質が良いと言うのとはちょっとニュアンスが違うと思うんですよね。もちろん悪いとも言いませんけどね。
そこからさらに一歩進んでですね。
・国産小麦でもグルテンを強化する。
と言う手法を考えるのも一つの道ではないかと思うんですよね。
で、グルテン強化というかデンプン添加の方法はいくつかあるんですけど、ジャガイモやタピオカなんかのデンプン添加じゃなく小麦でデンプンを添加したいとなると湯種が最適になってくると思うんですよ。ですから、職人さんなら是非湯種製法で国産小麦オンリーで美味しい食パンを作る方法を考えていただきたいです。
え?お前がやれ?僕は今職人じゃないですから。
さらにさらに踏み込んでですね。家庭で、しかも手捏ねだと湯種製法は事実上不可能と言って良いと思うんですよね。
となると・・・
という事で考え出したのが僕の最近作ったレシピ「うどんパン」なんですよ。これ別に笑いを取るために奇をてらったわけじゃなく、結構本気で考えたレシピなので、パン作りが趣味の方は家庭で是非ともお試しいただきたいです。
http://www1.ocn.ne.jp/~ribot/