連作(3)

http://d.hatena.ne.jp/c-mad/20100324から続く。
というわけで、本質的には「考えるな、感じろ」というのは「情報に頼るな、自分で考えろ(頭も身体も使って)。」という意味と考える方がすっきりすると思うんですよね。


そこで、他の国の事情は知りませんけど、少なくともこの日本において「Don't Think. Feel」を統治者に都合の良いように「全ての物事について理由を考えずにひたすら絶対服従せよ。そして死ね。」と捻じ曲げたのは「葉隠」に他ならないんですよ。「武士道とは死ぬ事と見つけたり」で有名なあれですね。


この「武士道とは死ぬ事と見つけたり」という言葉は確かにインパクトのある名キャッチコピーですよね。
ただですね。
一般的には「命がけで一つの事をやり遂げる。自分利益よりも他者の為に行動する」みたいなある種の道徳として捉えられていますけど、本当の意味は違うんですよね。


少なくとも、「葉隠」で書かれている「武士道」は「決断を迫られる局面に遭遇したら、死ぬ確率が高い行動を見せるようにしなさい。理由は二つあります。(1)どうせ考えたって正しい答えを必ず導き出せるとは限らないんだから無駄です。(2)死ぬ覚悟がある事を(見せ掛けだけでも)見せておけば、例え間違った行動でもお奉行が『命を懸けて行動したんだから、犯罪だけど無罪っていう事にしちゃって良くね?』と言ってくれるからお得です。」という意味なんですよ。崇高な自己犠牲の精神なんてかけらもないです。
葉隠って要するに「官僚の処世術本」なんですよ。なにせ「顔色が悪いと上司の覚えが悪いから、お化粧ポーチは職場の必需品!」とかそんな事が書いてある本ですからね。「より死ぬ確率の高い行動をする」というのもあくまで上述のように「裁判の時に印象点を稼ぐため」のアピールポイントな訳だからもちろん本当に死にたくはないんですよ。
だから


「道で、抜き身の刀をぶら下げた怖い人とすれ違ったら?→気がつかない振りをして通り過ごし、もう追いつかないくらい遠く離れてから『貴様!喧嘩を売る気か!おのれ〜逃げ足の速い奴め・・・』と周囲の人に聞こえるような大きな声で呟いて、『死を恐れない俺様』をアピールしよう!」
「ある日家に帰ったら嫁が不倫していました。どうする?→嫁が寝取られた事がばれたら恥です。台所に潜んで不倫男が帰るまで待って、こっそり嫁をぶっ殺して死体を素早く片付け、病死した事にしてバックレよう!」


とかそんな事が書いてあるんですよ。いやマジで。死狂いというより完全に気狂いでしょ(笑)。


こうしてみると、少なくとも「葉隠的武士道」というのはろくな物ではない訳で、これを国民に押し付けていたのが戦前戦中の日本の軍官僚な訳ですよ。日露戦争時代の、自分でも最前線で戦った経験のある軍人が上層部にいた頃ならともかく、WW?の時期の日本軍ってまさに現代で言う所の「官僚」しかいないわけですからね。こうしてみると全部つながるなって思うんですよね。
そんな「なんちゃって軍人な官僚(笑)」が葉隠的価値観を国民に押し付けるんだからそりゃぶっ壊れるに決まってますよね。日本軍の官僚ってコントのネタにするにもちょっと引くくらいのレベルで馬鹿ですからね。
例えば、いよいよ本土進攻される直前という時期に「連合国軍が戦車で攻めて来た場合の対処法」みたいなものが配られる訳ですよ。そこに「敵軍の戦車はわが軍の戦車より高性能だから太刀打ちできません」とか書いてあるんですね。それはいいですよ。それに続いて「だから、戦車の中の人を引きずり出して、素手で倒しましょう。柔道技が有効です。」とか書いてあるんですよ。完全無欠な(自主規制)でしょ(笑)?何が「有効です」だよ!!


しかもそうやって国民には自爆テロを強要しておいて、自分たちは天皇を人質に長野の山奥に地下要塞を作って引き篭もるつもりだったんですからね。映画「靖国」にでてくるような軍人コスプレ老害がどれだけ失笑物の存在だか良く分かる。余談ですけどあの映画、刀鍛冶のおじいちゃんと最後の記録映像は実に美しいですけど、ほとんどコントですよね。一番笑うのが、靖国参拝を妨害しようとして暴れる若者が取り押さえられた場面で、若者が連行される後を「中国へ帰れ馬鹿ヤロー!中国へ帰れ馬鹿ヤロー!」って延々どなり続けてついていく(自主規制)がいるんですけど、一回だけ「お前何処から来たんだ馬鹿ヤロー!」って言うセリフが混じるんですよね。お前何処から来たかわからない見ず知らずの人に「中国へ帰れ馬鹿ヤロー!」って延々シャウトしてたのかよ!


こうしてみると「武士=旧日本陸軍=現代の官僚」は本質的に全く同じで、一言で言うなら「とっても無責任」で共通してるんですよ。わかり易いでしょ?