拝啓、ジャンボ鶴田

scholaドラムス&ベース編2週目を観ました。自分は高橋幸宏さん大好きなので興味深く観ましたけど、一番心に残ったのはピーター・バラカンが、チャーリーワッツのドラムのクセ(スネアを叩く時にハイハットを叩かない)を知らなかった事です。有名な話だと思っていたのに。自分は趣味でギターも弾くのでプレイヤー視点から観るから気づくのかなあ。


さて、Angel Beats!が新章突入な感じですけど、「死後の世界での行動により、俗世での自分が救われる」という流れですよね。つまり「未来が過去を決定する」っていう話になってくるわけですよ。夏のあらしでもちょっと出てくる理論ですけど。
で、以前書いた「呪いと赦し」の関係で言うと、どう考えても現状のこの世の中、呪われているのは未来の方じゃないですか。つまり「未来側の人間」に「赦す能力」が備わっている事になる訳ですよ。
特にこの作品の登場人物はみんな「理不尽な死に方をした」わけだから、もうその時点で呪う資格十分な訳ですよね。さらに、恐らくみんな高校生設定ではあるものの年齢は多分ばらけてますよね。若者ではあると思いますが。椎名さんは謎ですが(笑)。個人的には「椎名さん、俗世では人妻だった」くらいの事があって欲しいんですが。
やっぱりこれは、「現代版赦しの物語」なんですよ。



で、そのAngel Beats!。先々週の回で臓器提供の話が出て、この時期になると思い出すジャンボ鶴田さんの事を書いてみたくなりました。今週の日曜日は三沢さんの命日だから、それもあって思い出したのかもしれない。


あれは5月、暖かい初夏の日差しが人々の心を浮き立たせている時期。当時パン職人だった私は怪我をして病院に通ってまして、病院のベンチで薬を待っている間にテレビのニュースでジャンボの死を知ったんですよねえ。2000年5月13日という事はもう11年も前なんですか。
さすがに長く生きていると、自分に大きな影響を与えてくれた方の死に直面する事は多くなるんですけど、ジャンボはその中でも確実にトップクラスですね。


ジャンボ鶴田さんといえば、まだ現役のプロレスラーだった頃に試合をしながら合間に勉強をして筑波大学の大学院に合格。
といっても、一時期流行った「芸能人の学歴ごっこ」とは違い、首席の次の成績で卒業するほど優秀な成績を残して、「骨の弱くなったお年寄りでも、骨に負荷をかけずに筋肉だけを動かして強くして、筋肉の衰えを防ぐトレーニング方法」の研究論文を書いて、それがアメリカの大学の教授の目に止まり、アメリカの大学のスポーツ生理学の教授に就任・・・というところでB型肝炎が悪化したんですよ。


そこで、とにかく臓器移植しか助かる道はないという事でドナーを待つ事になるんですけど、同じ境遇の人が集まる(集められた)アパートに行くとそこには、いつドナーが現れるかわからないから電話の前からずっと動く事ができずに心身ともに疲弊しきった患者の方々が集まっていて、それを観たジャンボは「こんな境遇では、ドナーが現れる前におかしくなってしまう」と、そこにいた人達全員にポケベルをプレゼントして、せめていつでも連絡を受けられるように、安心して外出できるようにしてあげたんですよ。そうする事で確実に自分の順番が遅れて生命の危険に晒される事になるというのに。

子供の頃は、番組対抗かくし芸大会で白雪姫をやったりスタードっきり(とかそんな感じの番組)で「プロレスラーは熟睡していてもレフェリーが耳元でカウントを数えるとカウント2で肩を上げるか」というヤラセ実験をやったり残り時間10秒でボストンクラブをやったり、要するに呑気すぎるジャンボに不満を感じていたんですよね。「拝啓、ジョン・レノン」の歌詞そのままに
ジャンボ鶴田。あのダサいおじさん。
ジャンボ鶴田。馬鹿な平和主義者。
ジャンボ鶴田。現実見てない人。
ジャンボ鶴田。あの夢想家だ。
と思っていたんですけど、大人になってその偉大さに圧倒されますね。そして
ジャンボを観ない事で何か新しい物を探そうとした。
でも今になって分かります。以前書いたhttp://d.hatena.ne.jp/c-mad/20100406葉隠的価値観から最も遠い人じゃないですか。難題に立ち向かう時、一緒に大騒ぎする事を良しとせず、そんなときこそ冷静に、優しい気持ちを忘れずにいようと心がける人ですよね。間違いなく。
いまだにこの国は、そういう人は「協調性がなく無責任」と批判されがちな社会ですけどね。俺はもう理解したよ。やっぱジャンボは偉大。そして、この国に産まれた以上音楽とアニメとプロレスを愛していない人間は信用できない。これだけはガチ。誰が何と言おうと。