プロレス

今日マイケル・サンデルの東大での講義を教育テレビで放送していましたね。
自分が良くこのブログで「これは良いプロレス」「あの人はプロレスできる」とか言いますけど、サンデル先生の講義?公演?なんてまさに「良いプロレス」なんですよ。生徒?聴衆?からのどんな技に対しても完璧に受身取りきれるし、やろうと思えば「一見正論風」な技を繰り出して得意げになってる奴を潰すのも失笑を買っている奴をセールするのも自在じゃないですか。あれがプロレス。そうか哲学の授業ってプロレスだったんだ。あ、ちなみに先月のAERAEnglishにマイケル・サンデルのインタビュー記事が載ってますけど、かなり分かりやすいっていうか基本に忠実な、教科書みたいな英語です。他の人のインタビュー記事の読み辛さと比べて段違い。外国人から観たら多分「美しい英語」なんじゃないでしょうか。ネイティヴの感覚は全く分からないので憶測ですが。


「プロレスが出来る」っていうのは当然面白さの基準でもあるんですけど、真実に近づくためには絶対に必要な事なんですよ。「その場その場で正しい事(ほとんどの場合は『正しい風に見える事』)」をその場その場でちょこちょこ繰り出す能力がある人は一杯いますし、今の世の中ではそういう人じゃないと出世しないというか生きていけないとすらいえる状況な気がしますけど、その場その場で正しい事を全部繋げたら絶対矛盾しているんですよ。本来は「その場その場ではずれているように見えて理解できなくても、最終的に全て繋げてみると見事な真理が浮かび上がる」っていうのが正しいんですよね。
あと「相手を叩き潰す」のはプロレスじゃないんですよ。潰さなきゃ場が収まらない時は当然潰すんだけど、基本的にはやらない。相手を光らせてこそプロレス。自分の好きなエピソードに
アンドレ・ザ・ジャイアントが来日した時にテレビで初めて相撲を観て、横綱:初代若乃花を一目見て「彼がこの競技のグランドチャンピオンだな?」と見抜き、琴桜のぶちかましを見て「何て恐ろしい!!まるでサイだ!!」とソファのクッションを被って震えた。
って言うのがあるんですけど、まあ表現の大げささはともかくとして
アンドレをそこまで恐れおののかせる相撲の凄さ」

「一目で最高実力者が誰かを見抜くアンドレの恐るべき慧眼」
もどっちも評価が上がるじゃないですか。ここが素晴らしいんですよね。


今週末は実家に帰っておりまして、部屋の掃除などをしていたらお約束で古い雑誌に釘付けになってしまってですね。

今見ても素晴らしいなあ、相撲軍団(笑)。スパッツにまわし&覆面のコーディネート。


まあそれはいいんですけど、10年程前の小川直也に対する期待感ってもう空前絶後ですよねえ。ポイントはいくつかあるんだろうと思うんですけど個人的には
1)ぽっちゃり体型だったのが、猪木のファスティングで説得力抜群の体型に。
2)PRIDEにNWA王者として参戦。
この2点に尽きると思うんですよね。(1)に関しては最近のTVCMでの友近とか中澤裕子どころの騒ぎじゃないインパクト。あの体型を観て「こいつ本気だな」と確信しました。
そして(2)。王者だったかどうかはっきりと覚えてないんですけど、「総合格闘技の舞台に、プロレスを代表してNWA世界王者のテーマ曲で入場」という時点で完璧。あの爽快感。たまらない。


あと「プロレスは演技」って言うのはいいんだけど、「演劇」で5万人の観客を集めるって、他のジャンルでありえない話ですよね。劇団四季がライオンキングやりま〜すって言ったってそれで東京ドームが埋まるとは思えない。スポーツなら埋まりますけどね。
やっぱどこかに「真剣勝負」の要素が入らないと、安定供給は出来ても爆発力にはならないんだろうなあ。例えば、大人気男性アイドルと女性アイドル複数の恋愛物で「最終的に結ばれた同士が本当に婚姻届を出す」みたいな事をやれば大反響でしょうけど。もちろん台本はあるんだけど、「これ、台本どおり展開しても客の反応薄そうだなあ」とみたら本来は結ばれる役ではない男が横取りしたりして。
それでも、生の舞台だから「ストップ!!台本と違う事勝手にやるな!!」何て言えない。そういうものが「プロレス」なんですよね。