クリスマスイヴですねえ。とはいえウチの周囲は驚くほどクリスマスイメージ無いんですが。
むしろ師走感丸出しというかお正月準備の商品がやたら目立ちますね。でもそれはどこの商店街も似たような感じなのかな。こうして見ると、お正月っていうのはさすがに生活に密着しているけどクリスマスっていうのはまずビジネスありき(なんか理由をつけて金を使わせようという発想のイベント)なんだという事が良く分かる。


さて。
しつこいくらいにタグを大量生産しているわけですけど、僕が一番最初にやろうと思っていたのはこのレビュー物なんですよね。「これはすぐに飽きるだろう」「やる気無いのに惰性で書き続けるのが一番嫌だからな」という理由でずっと書評タグは作らなかったんですけどね。


クリスマスの時期になると読みたくなる漫画が
勇午マグダラのマリア編〜
なんですよ。


ちょっとずつ紹介していきましょうか。思いっきりネタバレするので途中で興味が湧いた方は即PCの電源を落として本屋に走った方がいいですね。まあアマゾンでもいいですけど。いずれにせよ必ず後悔しない傑作ですから。


世界最高の成功率を誇るネゴシエーター:別府勇午
今回の依頼人オーストリアの次期首相候補の大物政治家:ザルツマン。依頼内容は「処女懐胎した少女:ノエミの父親を探す事」。
「父親の一部」として渡されたロザリオだけが手がかり。
彼女の受胎日は3月25日。出産予定日は2000年12月25日。それはイエス・キリストが復活する可能性が最も高いと信じられ続けてきた日。


どうです?読みたくなってこないですか?


水分含有率ゼロ%の謎のロザリオを調査する事で、そのロザリオは処刑されたキリストの脚を支え血を含んだ止まり木から切り出されたものと判明。
イエス・キリストマグダラのマリアとの間に子孫をもうけていた」と信じる狂信的過激派原理主義キリスト教団とキリスト復活をヨーロッパ統一の切り札に掲げる政治家の野望に世界が振り回されることに。


少女が身につけていた、唯一の手がかりのロザリオ。調査を進めるうちにそれは磔刑に処されたキリストが十字架から落ちないように脚を乗せていた止まり木(つまり聖遺物)から切り出された物だという事が判明します。それが水分を完璧に抜き取られている。
つまりイエス・キリストの血液が、DNAが誰かの手の内に入っている。
クローン技術を使えば、2000年12月25日、イエス・キリストが復活すると信じられ続けてきた日に、処女懐胎した少女から聖者が産まれる事も可能。
ザルツマンの目的は、2000年12月25日に大聖堂で全世界にミサが中継される中、列席者であるノエミに出産をさせ、処女懐胎した少女が出産した事、生まれてきた赤ちゃんはDNA鑑定の結果イエス・キリストそのものであることを世界的権威である学者に認めさせ、全世界に絶対的指導者の前では争いごとなど無意味、ヨーロッパを統合する事を果たす事。


十分に興味深い内容ですけど、クローン羊の話とかを聞いた時、誰もが「じゃあ人間のクローンも簡単に作れるの?じゃあイチローのクローンを9人作れば全員イチローの野球チームが出来るわけ?」みたいなことは想像したと思うんですよね。
となれば「じゃあキリストのDNAがもし残っていたとしたらキリストのクローン作れちゃうわけ?そうなったらキリスト教の人たちどうするのかね」
みたいな事も誰もが想像する事なわけで、ネタ的に突飛な訳ではないと思うんですよ。それを盛り上げる演出を上手く出来る人もたくさんいると思います。
で、僕がこの作品を特に好きなのは、風呂敷の畳み方がきれいだからなんですよ。
当然「キリスト復活しちゃいました。」で話を終わらせるわけには行かないので、そうはならない方向に話が向かうわけですけど、「主は来たれり」ムードに大聖堂内が流される中、それを逆転する手法が凄く好きなんですね。勇午は結果的に正義のために働く形になるけど基本的に「依頼人の依頼を忠実に遂行する」事が目的なので、決して自分が正義として動く事は無いんですよね。人々が己の信じる事に忠実に動いてくれれば自体は良い方向に行く。だから舞台を準備して全てを委ねるみたいな。ロシア編のラストもそんな感じでしたからね。
人によって読み取り方が全然違う作品だと思うのですが、素晴らしい作品である事に間違いは無いので是非読んでみてください。