不撓不屈


(1)昔々あるところにとっても頭の良い税理士がおりました。
(2)顧客に対し、違法ではない節税対策をいっぱい指導していました。
(3)以前彼に恥を掻かされたクサレ大蔵官僚(安井誠)が、私怨による監査を強行し、検察もそれを鵜呑みにしてもうメチャクチャでした。
(4)元々根拠無い言いがかりだったので無罪になりました。
っていう実在の事件を基にした小説です。
とりあえず、ノンフィクションとして読んでしまうと片側から偏った目線で理解してしまう事になるので単なるお話として読みました。
まず物凄く読みやすい。高杉良の文章力の高さは感じます。(当時)存命中の実在人物を扱ってるためか事実の羅列が多くなって流れがだるくなる部分もありますけど、会計に対する知識ゼロの自分が読んでも非常に理解し易い。
内容は、
主人公の気高い精神に感銘を受けたり国家権力を私怨で乱用(租税条約の課税用件に違反していない更正処分を出された事を主人公に取り消すよう指摘され、他職員の前で上司に呼び出され処分撤回するよう指示された事=つまり自分の間違いを指摘された事)を数年間恨みに思っていたらしい)した事に憤ったりしながら読むのが筋なんでしょうけど・・・
率直に言って読み進むにつれて主人公がウザくなっていくんですよねえ。勝ち組がずっと勝ち続けました。ちゃんちゃん。っていう以上のものを感じない。副業の保険業の停止命令が出された、みたいな部分があるんだけど、副業で当時10,000,000円近く(今なら一億近く?)稼いでいる辺りでもう感情移入できない。
っていうかですね。
安井誠と主人公って多分同じタイプの人間だと思うんですよね。立場が逆ならどちらも相手と同じ事してる気がするんですよね。まあ安井の方は大分稚拙な訳ですけど。「脱税指導で逮捕されて、肝心の脱税してるヤツが無罪ってどういう事?」っていう当然過ぎる突っ込みに返す言葉がないわけで。
っていうかその安井を相手に訴訟を起こさない時点で萎え萎えなんですよね。完全破壊しなきゃダメに決まってるだろ。坊主の説教なんかどうでもいいっちゅーねん。
一方やたらに格好良いのが渡辺ミッチーなんですよねえ。自分も税理士だということもあるんだろうけど、離党勧告もものともせず「社会党に手柄を取らせるな!」と国税局を徹底追求するのが素敵。まあ実在の故・渡辺美智雄氏もガンで入院するまではその言動がいちいち正しいんですけど。
題材からして社会人向けと思われがちな作品だろうけど、決して馬鹿にした意味では無く、中高生あたりが読書感想文用に読めばよい感じだと思います。三国志とかあの辺を読む感覚で「僕もこんな立派な人になりたいな」とか思いながら読んでくれれば良いんじゃないですかね。