職人とか

先日母親が「あんたがやってるような事をやってる人がいる!」と言い出して、何かと思ったらNHKのニュースで「冷やしパン」なる物を売っている人が紹介されていて、その人がネットで製パン技術やらレシピやらのサイトを運営しているとかで。


冷やしパン・・・という名前自体はどうかとして、結構昔からやっていた事なんですけどね。自分が職人になり始めた頃、夏場はクリームを大量に入れたデニッシュなんかを冷蔵してから店に出していました。最近の何でもかんでも「冷やし」な時流で脚光を浴びたんですかね。
母親の説明ではどういうパンを「冷やし」として売っていたのかは今一良くわからなかったんですけど、冷やし専用に開発したものだとしたらおそらくブリオッシュに近い物だと思います。冷やした物を食べた時に口溶け感を味わううニュアンスのものなら(融点が人間の体温に近い)バターを大量に使ったものにするはずですから。
で、ちょっと気になったのは、母親の説明によると「通常15%のものを冷やし用に30%に増量した。」みたいな事を言っていたという事らしいんですよ。普通に考えたら「バターを30%に増量した。」という事かなと思うんですよね。そうか・・・自分のレシピではバター56%なんですよね(笑)。物凄く曖昧な情報なので、突っ込もうとかそういう気持ちは無いですよ。まあ「最近冷やしが流行ってるんだな」という事を言いたいのと、(デニッシュやブリオッシュ、メロンパンなど洋菓子に近いニュアンスの)パンは、昔からごく普通に冷やして売ってますよという事を言いたかっただけです。


それよりも自分が心に残ったのは、先日テレビで観た天ぷら職人の方なんですよ。
美味しい天ぷらの衣の作り方として「水:粉:空気=1:1:1」という説明をされていました。簡単に言いますけど、生地(衣)の1/3分空気を抱き込むというのはかなりの物だと思うんですよね。それを、グルテンを作らずに混ぜなきゃいけないんだからかなりの技術が必要なはず。
逆に言うと、これだけ具体的な数字を出しても同じ物には出来ないから、具体的な数字を明示できちゃうんですよね。ここから先はまさに「職人の経験と勘」の領域。この、「どこからは目で盗む領域だけど、どこまでは手を貸さないとスタートラインにすら立てない領域」という区別が出来ずに何でもかんでも怒鳴り散らせばそれで良いと思ってる指導者が多過ぎるのが困る。