'おいしく、食べる’の科学展

私がお台場の職場に勤務していると言う事は何度か書いていますけど、仕事以外では2回目になるお台場訪問(1回目は潮風公園の等身大ガンダム拝観)として日本科学未来館に行って参りました。


何をしに行ったかというとですね。タイトルの通り「'おいしく、食べる’の科学展」という展示が行われている事を某ビジネス系メルマガで知りまして、私も今までパン職人としてのみならず生地開発や出店などで少なからず得た知識を提供するサイトを運営しておりましてhttp://www1.ocn.ne.jp/~ribot/、そちらや、このブログでも度々添加物等食品の安全に関するコラムを書いている以上、国立の施設で行われるイベントならさぞや勉強になるだろうと思って赴いた訳です。



で、先に結論書いちゃいますと、内容は全然大した事無いというか率直に言って「情報化社会の現在、高校生の文化祭の研究発表でもこの程度は作れるだろ?」と思うくらいぬるい内容だったんですよ。科学未来館自体が「子供達に科学に触れるきっかけを作りたい」みたいな目的で作ってある感じなので方向性としてこんなものなのかもしれないですけど、例えば「宇宙」とかの話なら「本当に理解をさせるならもっと細かく説明しなければ誤った知識を持つ事になっちゃうけど、導入としてはこのくらいスカスカな表現になってしまう」っていう表現で誤解を与えても特に生活に支障をきたす事は無いけど、食品に関してはそれだと誤解して人体に悪影響を及ぼす知識を持ってしまう可能性も無くは無いから、あんまり感心しないんですよね。
ド素人がやけに上から目線で偉そうに本当に申し訳ありません。でも、私からすると「間違いではないけど、もっと突っ込んだ表現をしておいた方が誤解を与えなくて良いのでは?」と思う表現が多過ぎたんですよ。「イーストと酵母の違い」とか「オリーブオイルは太らないのか?」とかその辺の解説で。マクドナルドが提供しているが故に「普通の畑で育てた野菜よりバイオ農法の方が安全で栄養価も高い」とかかなり疑問のある表現を平気で喧伝しているし。「遺伝子組み換え食品」を「素晴らしい発明」と取れかねない危険な表現していたりしますからね。この展示の表現方法をそのまま鵜呑みにする方がよっぽど怖い。
まあ、「添加物=絶対悪という固定観念を捨てさせる」という意義は有るのでしょうけど、具体的に全ての人の全ての食生活を監視する事は不可能なので、中途半端な知識を与えちゃうとミスリードを招く危険性の方が大きいと思うんですよ。実際「塩分を取り過ぎると成人病になる」と思い込みすぎて徹底的に塩分を減らして、低ナトリウム血症になる人とか本当にいるらしいですからね。


というわけで、ここでは製パンについてちょっとヒントになりそうな2点に関してだけ触れようと思います。
1)チョコレート
近年食感がふんわりした所謂エアインチョコを良く見かけますけど、あれは高圧力の中でチョコを作って、大気圧に戻す事によって空気を多く抱き込んだチョコが出来上がるんですよ。「圧力」というのはパンの発酵/熟成にも実は重要な要素だったりするんですよね。一般家庭でパンを作るのには応用が効く物では無いから触れた事無いですけど。
あと、「カカオマスと粉乳と砂糖の粒が大きすぎるとザラザラ感が残り、小さすぎると表面積が大きくなり粘りが出る。」という事で「滑らかな食感」の粒子の大きさの重要性についても触れられていました。佐藤の粒の大きさの食感に与える影響については、是非参考として頭に入れて置いていただければと思います。
2)味の組み合わせ
人間の味覚は、味覚以外の他の感覚にかなり左右されてしまうので実に曖昧なものなんですけど、純粋に味覚の「センサー」だけで味覚の要素を判別した場合に近くなる味の組み合わせが紹介されていました。一例として
梅干+牛乳=チーズ
ようかん+バター=スイートポテト
トマト+砂糖=苺
牛乳+たくあん=コーンスープ
といった辺りですね。「この食材は、あの食材とあの食材の、あの部分に似てるなあ」等と想像してみるのも、新しいレシピのヒントになるかと思います。あと、上に書いた事は「味覚の要素のみ」で判別した場合の話なんですよ。実際には五感全てが「味」に影響を及ぼしている訳です。中でも「臭覚」は特に影響大な事は言わずもがなですよね。私が良くその重要性をサイトで書いている「香ばしさ」がその最たる例かもしれません。先日「ココアエスプレッソ」なる飲み物を飲んだんですけど、後味がチョコフレークっぽく感じたんですよ。あれは、コーンフレークの香ばしさとコーヒーの香ばしさが重なったからなんでしょうね。つまり、味覚以外の感覚に作用する部分でも、錯覚を起こさせる組み合わせはいっぱいあるという事です。これも是非覚えておきたいです。凄く単純な例で言うと、「魚の生臭さを消す」と言うのも「美味しく食べる」事への影響は大きいですよね。
あとは、結局「正しい物」は何かを学ぶ事が安全への近道という事も意識してもらいたいです。上の例で極端に言うと、味覚の理論上は「牛乳+たくあん=コーンスープ」かもしれないけど、牛乳にたくあんを入れて出されても「うわあ。美味しそうなコーンスープだ!」とかなりませんよね。正しくない時期に正しくない製法で作られた野菜はやはり見た目が『間違っている。』そういう事を一つ一つ憶えるのが結局安全への近道ですよ。
おまけですけど、わずかな栄養とミネラルでどんどん増殖し、光合成の能力も極めて高く、人間に必要な栄養素を豊富に抱えており、セルロース(植物が持っている炭水化物の繊維。人間はセルロースを分解する酵素を持っていないから紙を食べられないが、ヤギは分解する酵素を持っているから紙を食べられる)が無いから消化吸収しやすいミドリムシは夢の食材らしいですよ!私もミドリムシクッキーお土産に買って帰りました。


で、散々文句言っておいてなんですけど、私がこの日楽しめなかったかと言うと実は結構楽しかったんですよね(笑)。この展示以外の常設展示は結構面白かったです。プラネタリウムもありますしね。
子供向けとは言えそこは科学の専門的な事を取り扱っているのですが、中には説明の係の方がたくさんいるので安心です。
・・・というか正確に言うとたくさん居過ぎです(笑)。良く事業仕分けの対象にならなかったよなあ。昔西原理恵子バブル崩壊後の高島屋の様子を「店員が卒塔婆のようにそこら中に刺さっている」と表現しましたけど、それに近いくらい解説係がたくさんいます。で、フランクに説明してくれるのはいいんですけど、「いや〜私も75歳になりましてね〜」とかじいさんの身の上話はどうでもいいよ!。ニュートリノについて詳しく教えてくれよ!地球をする抜けちゃうほど小さな素粒子をどうやったら捕まえる事ができるんだよ!と心の中で突っ込まずにはいられない。
一日遊べる・・・という表現はできませんけど、どう考えても明るい未来が見えませ〜んな世の中で、まだまだ捨てたもんじゃないぞという気持ちになれる点では有意義かもしれません。ASIMOにも会えますしね。あれは結構感動する。あの滑らかでムダの無い動きは、桜井章一から観たらどう映るんだろうなあ。



分かりにくいですが、右下にわずかに写るのがASIMO。この日は休日なのに小さなお子様の集団が大量におられましたですね。ASIMO大人気過ぎて後ろからかすかに覗く事しかできなかったんですよ。あんなに大歓声を上げる子供の集団を見たのは久しぶりだなあ。しかし「お遊戯的な事なら平日にやってくれない?」と言いたい気持ちで一杯ですが。

この扉から出てきます。動物園っぽい。

癒し系魔法少女ベホイミアザラシ型介護ロボ:パロもいます。触り心地は・・・まあまあかな。

色んな展示があって楽しいんですけど、これは赤外線サーモグラフィで観た私。画面向かって右下を向いています。

トイレの掲示物のウザさがちょっと気になりました。

おまけ。平野綾だけTVで平野綾が一日バイトしたロッテリア日本科学未来館はフジテレビの湾岸スタジオ東京湾岸警察署の間にあります。すぐ近くに東京湾。今度の週末は、お父さんとお子様を科学未来館に放り込んでお母さんはVenusFortでバーゲン漁り・・・なんてどうでしょうか。